スタッフ野田です。
三井川製作所の工房紹介レポートその3です。
今回はタケノコハギの作り方を中心にご紹介します。

前回はキューに使用する部材と製作の大まかな流れをご紹介しました。
これは多くのキューメーカーと共通する部分が多いのですが、三井川製作所が得意とする
タケノコハギ(バタフライポイント)は通常の剣ハギ(ケンハギ)とは製作方法が異なります。
剣ハギは先端が尖っていて、縁取りベニヤが非常に細いのですが、タケノコハギは先端が
丸くなっており、先端部ではベニヤが大きく露出しているのが特徴です。
剣ハギの例です。↓

タケノコハギの例です。↓

いずれも販売済みの三井川キューです。
ご覧の通り、見た目が全く違うことがお判りいただけると思います。
ハギの本来の目的は、複数の木を組み合わせることにより強度を増すことと、曲がりにくくすること、さらに性質の安定性を図ることなのですが、現在では装飾的な意味合いが強くなっています。
剣ハギはショートスプライスやインレイといった比較的短時間で製作ができる方法があるので、現在市場にあるキューの多くは剣ハギとなっています。
三井川製作所ではタケノコハギをフルスプライスという工法で製作しており、これにはショートスプライスやインレイとは全く異なる技術です。
通常のキューではバットはフォアアーム、グリップ、バットスリーブの3つの部分を別々に作って組み合わせるのですが、フルスプライスではそのように一部分ずつ作ることはできません。
また、バット全長にわたる長い材料を組み合わせることが必要になり、それは不良部分のない大きな銘木材が必要となることを意味します。
材料が大きくなるほど不良部分が表面に出てくる可能性も大きくなるので、材料を厳選する目が求められます。
三井川製作所では材料を仕入れる際に、できるだけ直接材料を目で見て選び抜いているのですが、
それでも削り出してみると1/3くらいの材料が使えなくなるそうです。
フルスプライスで剣ハギを作ることも勿論でき(一般的に本ハギと呼ばれます)、ジョエル・ハーセックなど一部のカスタムキューメーカーが製作していますが、上記のような理由から剣ハギではショートスプライスやインレイが主流となっているのです。
製作に手間がかかり、たくさん作ることが難しいタケノコハギを敢えて主力とする三井川製作所、
早速その製作工程をご紹介していきましょう。

まずは原材料の銘木を角材の形に切り出すのですが、これは前回ご紹介した丸鋸で行います。

そして切り出した材料を更に精密な角材になるように調整するのがこの機械です。

一見すると、いったい何をするのか分からない機械ですね。
中央部のクローズアップをご覧ください。

水平に置かれた2枚の鉄板の間に回転する刃があります。
この上を材料を通過させて、切断面をフラットにするわけです。
なぜ角材の段階でそれほど精密に加工しなければならないかと言えば、この加工の精度によってタケノコハギの現れ方に大きな違いが出てくるからです。
その理由については、また後述します。

これは調整された角材に90度の切れ込みを入れる丸鋸です。

刃の部分のクローズアップです。

加工途中の材料を刃の横に置きましたが、このようにして角材を90度ずつ削ります。
目的とするハギの長さに合わせたテーパーをかけたガイドに沿って材料を動かして、このような斜めの切り込みを入れます。
テーパーを緩やかにするほど長いハギになるというわけで、三井川製作所ではロングハギ、更に長いウルトラロングハギも製作しています。

カットが終わったバットを構成する2つの部材です。
種板(たねいた)と呼ばれる縁取りベニヤがすでに取り付けられています。

ハギとなる部材が差し込まれる側のバット部材はこのようにカットされており、当然ながらこちらも精密なテーパー加工が施されています。
この2つの部材を組み合わせて丸く削るとバットになるわけです。

ハギとなる部材のアップです。
緑、オレンジ、赤のベニヤが表面に大きく見えています。(加工前なのでさらに下にある2枚のべニヤはまだ見えません)
側面を見ると分かるように、ベニヤ自体は大変薄い材料であり、わずかなテーパーのズレでも表面に現れるベニヤの長さが大きく異なってきてしまうのです。
最初の角材の状態で精密な加工が必要だった理由はここにあります。

三井川キューは人気があるうえに生産数が少ないため、なかなか在庫があるというわけにはまいりませんが、商品ページにある「再入荷お知らせメールを登録する」機能を使っていただければ入荷時にご案内することができます。これは予約・購入を確約するものではありませんので、お気軽にご利用ください。

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必要な写真は以下の4点となっております。

①全体 ②フォアアーム ③バットスリーブ ④ジョイント

※写真角度などは紹介されているキューをご参照ください。
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