キューの取り扱いについて その2

B!

こんにちは、キューショップジャパンのスタッフ野田です。

キューの取り扱い方その2です。
まずはキュー尻についての注意です。
通常、キュー尻(バットキャップ)には、尻ゴム(ラバーバンパー)が付いており、メーカーやモデルによってその形状はいろいろです。

左から、マイク・ホイーラー、サウスウエスト、ジョスウエスト、ポール・モッティ、ペリー・ウエストン、プレデター、タッド2本、オメガDPK、シュレーガー2本

同じメーカーでも作られた年代やモデルによって尻ゴムの形が異なることは珍しくありません。
中には、薄い尻ゴムが付いているものもあり、そのようなキューはちょっと斜めにしただけでもバットキャップが床(地面)に当ってしまいます。タッドなどが、これの代表格でしょう。

 

これはもう気をつけるしか手がなく、どうしても気になるならオリジナリティが失われるのを覚悟で厚手の尻ゴムに交換するしかありません。
では厚い尻ゴムが付いていれば大丈夫かというと、他にも意外な落とし穴があったりします。
これも時々見るのですが、プレーがうまくいかなくて、キュー尻を床に「ドン!」と叩き付けるということをしたことがありませんか?
そこまで強くなくても、床にキュー尻をストンと落とすことを無意識に行なっている人がいます。キューを垂直に床に降ろせばダメージはないと思うのでしょうが、さにあらず。下の図をご覧ください。

尻ゴムを下に叩き付けると、圧縮されたゴムは横方向に膨らもうとして、内側からバットキャップを広げようとします。尻ゴムを取付けるバットキャップの窪みが深い(側面の肉薄部分が多い)ほど壊れやすいといえます。昔のジナキューはこれが原因でバットキャップが割れることがあり、90年代中頃に製作者アーニー・ギュテラスはバットキャップと尻ゴムを変更しました。
現在は多くのキューがこの点を考慮した構造になっていますが、無用な衝撃をキューに与えてもよいことは何もありません。キューはそっと床に置きましょう。

次にシャフトの脱着についてですが、これもあまり知られていない危険が潜んでいます。
下の2枚の写真をご覧ください。

再び羅立文プロの特別出演です。

あなたはシャフトを外すとき、上の写真のようにバットのグリップ部分を持っていませんか?
これは必ず下の写真のように、ジョイント近くを持ってキューを回すようにしてください。
理由はバット部分の構造にあります。
これは標準的なバットの構成です。


多くのキューはフォアアーム、グリップ、バットスリーブがそれぞれ独立した部品で別個に作られ、フォアアームとグリップはボルトと接着剤で接続されています。グリップを持ってシャフトを外そうとすると、この接続部分にも力がかかり、緩む可能性があります。

これは前回もお見せした折れたザンボッティの写真ですが、右手で持った折れた上半分のジョイントピンで指し示しているのが、フォアアームとグリップをつないでいるボルトです。見づらいですが、銀色のネジの頭がわずかに見えます。
こちらは半完成のザンボッティです。

持っているのはバリー・ザンボッティその人です。
フォアアームとグリップが別部品になっていますね。手前のキューは黒檀のフォアアームとメイプルのグリップが接合されているのがよくわかります。これはショートスプライスと呼ばれる製法で、バットがワンピースでできたキューやフル・スプライス構造のものなら接合部分が緩むといった心配はないのですが、残念ながらそのようなキューは少数派で(その理由については、また別の機会にご説明したいと思います)特に古いキューは注意が必要です。
フォアアームとグリップを切り離してキューを作ることを考え出したのは、かのジョージ・バラブシュカだと言われていますが、現代のような優れた工作機械や強力な接着剤がなかった時代に作られたビンテージ物などは接着が経年変化で劣化して外れてしまうことがあります。
最近のキューでも油断は禁物で、何度もこの部分に力が加われば、目に見えて緩むことはなくとも、撞いた時の感触が変わったり、異音がする原因になったりします。必ずジョイント近くを持って脱着してください。

次回は、保管方法などをお話したいと思っています。

 

バットキャップを保護する尻ゴムはこちら

 

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