こんにちは、スタッフ野田です。
私は「宇宙戦艦ヤマト」のファンで、40年以上前にTVシリーズの第一作を見て衝撃を受けてから、このシリーズはずっと見守ってきました。現在は最新版「宇宙戦艦ヤマト2202」シリーズが製作されていますね。コンピューター・グラフィック(CG)のおかげで、戦艦や戦闘機などの複雑なデザインのメカニック類が実になめらかに動くのはいつ見てもすごいと思います。反面、CGは無機質というか、冷たい感じになってしまうので、使う対象を誤ると味気ないものになってしまうのではないかと思います。
さて、ビリヤードの世界でもコンピューターを使ってキューをデザインすることは現在ではかなり広く行われており、大手メーカーではコンピューターと旋盤を連動させたCNCマシンを使うことが常識となっています。少量生産のカスタムキューでも幾つかのメーカーがかなり早くからこういったシステムを導入しています。
下の写真は、1997年に私が撮った写真です。ジョスウエストキューの製作者であるビル・ストラウドが、コンピューターによるデザインをエキスポでデモンストレーションしているところです。画面には「サルタン」というキューのデザインが映っています。
こちらはその時に展示されていたジョスウエストキューです。
彼はダン・ジェーンスとジョス・キューの製作に乗り出し、その後独立してジョスウエスト・キューを旗揚げしました。よく勘違いされますが、ジョスとジョスウエストは全く異なるもので、前述のように製作者の間に知人としての関係はあっても、キュー製作は全く異なるコンセプトで行われています。
その後、彼はユニロックジョイントやラジアルピンなどの開発にも関わるなど常に新しい技術を求めており、コンピューターをデザインに使うようになったのは当然の成り行きだったのかも知れません。
また、こちらはジナキューの製作者、アーニー・ギュテラスです。
これは1995年に私が彼の工房を訪れた際に撮影したもので、デザインの作り方を教えてくれているところです。画面にはインレイのデザインの一例が示されていますが、上下左右が対称形をしているのがわかるでしょうか。彼はまず、左上四分の一の部分を作り、それを下方向に対称形にコピーし、さらに全体を右方向に対称形にコピーして、瞬く間に写真のデザインを作り上げました。この方法で変化に富んだデザインを作れると彼は言っていました。
ちなみに、トラックボールに的球(9ボール)を使っているのが面白いですね。
彼はキュー制作の作業を他人に見せることを好まないのですが、私が2016年に彼の工房を訪れた際に作業の幾つかを見せてくれました。その際に削り具合を調整するプログラムをいじるところも見ましたが、旋盤内に組み込まれた制御用のPCは古色蒼然としたもの(TRS80?)で、CP/Mという今では誰も知らないような昔のOSが使用されていました。
この他にもエスピリチュやデールペリーなど、早い段階からコンピューターを導入しているメーカーがあります。当然ながら日本のアダムやMezzもかなり以前からCNCを導入しています。
キュー製作にコンピューターを導入することについては賛否両論ありますが、デザインの自由度や部品を切り出す正確さ、工作の早さなど導入の利点は多く、これを利用するメーカーが大勢を占めるようになるのではないかと思います。
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