こんにちは、スタッフ野田です。
キューショップジャパンの「超初心者用ビリヤード・ドリル」のページへようこそ!
このページでは、ビリヤードが上手くなりたいけれど、どんな知識が必要でどんな練習をすれば良いかが分からないという初心者の方のために、最低限必要な知識やスタッフ野田オススメの練習法などをご紹介します。 

今回は前回に続いてスロウについての解説です。
スロウでどれだけ的球のコースがズレるかを正確に予測することは難しいのですが、全く無為無策というわけでもありませんので、それについて説明したいと思います。

スロウの大きさに影響を与える要因には湿気や球の汚れなどのプレーヤーにはどうしようもないものも多いのですが、ある程度コントロールできるものもあります。それが「厚み」と「力加減」です。
まず厚みについてですが、次の配置を試してみましょう。

フットスポット上に⑧を置き、その手前のロングライン(テーブルを縦方向に2分する中央のライン)上に⑨を⑧に密着させて置きます。
この状態で手球をいろいろな方向から⑨の正面に当てて、⑧のコースがどれだけズレるかを見ようというものです。正確な角度で当てることを期するために、⑨を手球に見立てているわけです。
ズレの大きさが分かりやすいように、反対側の短クッション中央に①、そこから半ポイント離したところに②を置いています。
もし手球をロングライン上から⑨の正面に当てれば⑧は①の正面に当たることになります。

ではまず厚み3/4(約15度)の動画をご覧ください。

ズレはわずかで、⑧は①にかなり厚く当たっています。
次は厚み1/2(約30度)の動画です。

ズレは大きく、⑧は①と②の中間地点ぐらいへ向かっています。
そして厚み1/4(約50度)です。

ズレは厚み1/2より少なくなり、⑧は①に当たっています。
力加減はすべて中くらいです。

ご覧のとおり、3種類の中では厚み1/2、角度にして30度くらいの時に最もズレが大きくなることが分かります。
厚みが薄くなるほどズレが大きくなると思った方がいらっしゃるのではないかと思います。たしかに厚みが薄くなるほど的球を横方向に動かす力が大きくなるのですが、一方で薄くなるほど的球に加わる力が少なくなるので、横方向への力も弱まってしまい、このような結果になるわけです。
状況にもよりますが、大体30度から45度くらいでズレは最大になります。

では力加減による変化を見てみましょう。
上記と同じ配置を使って、厚み1/2で力加減を変えて試してみます。
中くらいの力加減では⑧が①と②の中間くらいに向かいました。
力加減を強くした場合の結果です。

ズレは少なくなり、⑧は①に当たっています。
次に、弱く撞いた場合の動画です。

ズレはさらに大きくなり、⑧が②に当たっています。
別の配置でも試してみましょう。


これは前回もご紹介した配置で、①と②は密着しており、右上コーナーに向かってまっすぐ並んでいます。この配置で30度くらいから①の正面に手球を当ててみます。
ではまず強く撞いた場合です。

そして同じ配置で弱く撞いた場合です。
比較のために、強く撞いた場合に②がクッションに入った位置にチョークを置いています。

ご覧の通り、いずれの場合も弱く撞いた方が大きくズレる結果となりました。これも意外に思われた方がいらっしゃったかもしれません。
確かに強く撞いた方が横方向への力も大きくなるのですが、ズラそうとする摩擦力よりも真っすぐ前へ進もうとする力の方が勝るためにズレが小さくなるのです。つまりスピードの増加による摩擦力の増分よりも的球が前方に進もうとする力の増分の方が大きくなるということです。そのため弱く撞くほどスロウによるズレが大きくなります。
なお、スタッフ野田はこういったスロウという現象について物理的に詳しく説明した文献を見たことがなく、いつもの勝手な予測(!)に基づいた説明であることをお断りしておきます。
それでも長年にわたる自身の経験則から、厚みでスロウが最も大きくなるのは1/2くらいであり、力加減が弱いほど大きくなることは間違いないと言い切れます。
プロや上級者のプレーを注意深く観察すると、たとえポケットに近い簡単な配置でも角度があってゆっくり撞かなければならない場合には、かなり慎重になっていることが分かると思います。
そしてこのスロウの影響が極端に出る「スキッド(skid)」という現象があります。
これは何らかの原因で的球のコースが異常に大きくズレる現象で、手球・的球の接触点に傷やチョークの汚れなどの摩擦力を極度に大きくする要因が働いて発生すると言われています。
トーナメントなどでプレーヤーがレフリーに手球のクリーニングを求めることがありますが、これは異常な摩擦力を抑えてスキッドが発生する可能性を低くするために行なっているのです。
しかしボールをきれいにすることによりスキッドが発生する可能性を低くすることはできても完全に防ぐことはできず、もしスキッドによりミスショットとなってしまったら運が悪かったと諦めるしかありません。

以上、2回にわたってちょっと小難しい話になりましたが、将来必ず必要になる知識ですので、こういった現象があることを頭の片隅に留めておいてください。

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