こんにちは、スタッフ野田です。
羅立文(ローリーウェン)プロによる14-1解説動画シリーズですが、今回は新年特別企画として1ラックだけではなく、ハイランチャレンジで失敗するまで続けてもらいました。舞台は羅プロのお店「プールラボ」ではなく、JPBA崎村プロが経営する「サイドナイン」です。
1球ずつ説明を入れると大変長くなってしまいますので、説明は要点のみにしています。
それでは早速動画をご覧いただきましょう。
羅プロが慣れない環境で果たして何点までミスなしで続けられるか、ご覧ください。
最初のラックのブレイクです。
ハイランチャレンジですので、最初は手球とブレイクボールを好きな配置にして始めています。
ブレイクボールをサイドポケットに狙うこの配置は、的球を外す危険が少ないので強く撞くことができ、手球はラックの頂点に当たるので効果的なブレイクができます。
最初のブレイクで充分ラックが散っているので、さしたるトラブルなく取り切っていきます。この場面では、12番を入れて6番を左フリにして中央のクラスターをブレイクするプレーをしているところです。
残り6個になった配置です。
直前の13番から7番に出したところなのですが、ちょっと力加減が弱くて7番を入れるとブレイクボールとなるはずの14番が大きく動いてしまいます。
このため狙いを3番に変更します。本来は7番を入れて手球を14番の左を通してヘッド側にある2・9番を次に狙う予定だったのでしょう。
3番はちょっと嫌な球ですが、2・9番に球なりで出すことができます。
第2ラックのブレイク直後の配置です。まずは7番をサイドに入れ、次に11番を狙います。
11番でクラスターをブレイクできるのですが、それはせず11番の次に8番でブレイクします。これは11番からクラスターへは距離があって正確に狙ったところに当てることが難しく、しかもワンクッションで当てるのであまり強く割ることもできないため、当て方を失敗すると手球がクラスター内に埋もれる可能性があるからです。8番なら手球がどのように動くかがかなり正確に予測できます。
クラスターのブレイクに成功しトラブルは無くなりましたが、有効なブレイクボールが欲しいところです。
羅プロはかなり早い段階からフットスポット近くにある4・6番に目を付けていました。4番を左フリにすれば6番が有効なブレイクができる位置に移動すると考えていたのです。そしてそのためのキーボールとして15番が良い位置にあります。
この配置はまさにそれを行なおうとするところです。
見事な力加減で6番を理想的なブレイク位置に動かした羅プロですが、終盤になって力加減のミスが出ました。
本来は12番をもっと厚くして、次に13番をサイドに取る予定でしたが、この薄さではそれができません。
このように14-1ではフリの向きを間違えることはもとより、どれくらいフリをつけるかによっても取りきりの困難さが大きく違ってきてしまいます。
手前に引いて13番を左コーナーに取ることも可能でしたが、羅プロは確実に12番を入れることのできる中心撞きで手球を6・13番の間を通してポジションしました。手球が13番に当たっても何とかなるという考えだったそうです。このような危険なショットをしなければならなかったのは、すべて12番へのポジションミスが原因だと言えます。
第3ラックのブレイク後に取り出しの10番を入れたあとの配置です。
このラックは興味深い点がありますので、少し細かく説明したいと思います。
まず、ここで羅プロが何を見ているかに注目してください。
これは8番を取り除けば3・4番が左コーナーに通ることを確認しており、この時点で1→8→7→3もしくは4というシークエンスを考えているのです。
予定通りコトは進み、4番で14・9番のクラスターを散らすところです。
しかしながら4番はかなり厚い配置で、羅プロは強めに撞いたのですが、14番が少ししか動かず、隣接する5番にくっついてしまいました。結果論かもしれませんが、これは4番をゆっくり撞いて9番を14番から少し離すだけで良かったと思います。次に3番か11番を狙うことができたでしょう。
実はこの小さなミスが後の失敗につながる導火線となるのです。
4番、3番と入れたところです。ご覧の通り5・14番がくっついていますが、周囲に何個かの的球がありますので、これらを利用してブレイクすることが可能です。
まず、9番から押しの逆ヒネリでブレイクすることが考えられますが、成功すれば最も有効な手段ではあるものの、ある程度強いヒネリが必要でコントロールが難しく、9番を外してしまう可能性もあります。
12番はこの手球の位置からではブレイクするには薄すぎ、15番はブレイクボールの最有力候補なので、使いたくありません。
しばらく考えた後、羅プロは15番で確実にブレイクすることを選びました。
ブレイクは成功しましたが、散らした5・14番がフットーレール近くにあった2番に寄ってきてしまいました。
この後、14番を右コーナーに入れながら2・5番をブレイクして取ることができ、11番をブレイクボールとして取りきりに向かいます。
残り3個の配置です。2・5・14番のトラブル解消のために良いポジションを取る余裕がなく、中途半端な配置となりました。
羅プロは9・13番のどちらを先にとるべきかしばらく考え、13番から取りに行きます。9番から13番は有効なポジション範囲が狭いことが主な理由だったと思われます。
9番へは全くのフリ無し状態となり、クッションを使えないので直引きを余儀なくされることになりました。
羅プロは見事な力加減でブレイク可能なところに手球を持ってきました。
ちょっと薄め(ブレイクボール11番はセンターより少しフット側にあります)なので、直接ラックを狙うとラック側面に手球が当たってコーナーへスクラッチする危険があります。羅プロはそれを危惧してフットレールからのワンクッション・ブレイクを試みます。
11番がサイドポケットに入った瞬間です。手球が思ったよりラックから遠く離れたところに向かい、結局手球はラックに当たらずヘッド側に戻ってきてしまいました。羅プロにしては意外と言えるほど珍しい失敗です。
このような配置が残り、ハイランチャレンジでセーフティは意味がないので羅プロはラックの角にある6番をバンクでヘッド側コーナーに狙いました。しかしこれはあえなく失敗して、結局14点x3ラック+1点=43点のランとなりました。
羅プロとしては不満足な結果でしたが、時間の関係で再度チャレンジすることができませんでした。それでも慣れていないテーブルで43点のランが出せるのはさすがだと思います。
ちなみに、最後に羅プロがトライした方法について解説します。
ブレイクに失敗してラックがまったく崩れずに残ってしまった場合は普通ならもちろんセーフティになるのですが、どうしても何か狙いたいという場合は、手球の位置に応じて色々方法があります。
当然ながらどれも不確実極まりない方法なのですが、今回の羅プロのトライもその1つです。
手球を図のようにラックの角に当てます。手前の的球に当たらないようにして、力加減は強めです。強くしないと的球がヘッド側まで届きません。
角にある的球は隣接する的球との関係でフットレールにほぼ垂直に向かうのですが、クッションから図のように反射してきます。
こうなる理由は、的球に摩擦によるヒネリがかかるからです。
手球が図のように11番に当たると、手球と11番の間に働く摩擦により11番に右ヒネリ(左回転)がかかります。同時に11番と隣接する12番との間に働く摩擦からも同様のヒネリがかかります。
これは「もらいヒネリ」と呼ばれるもので、手球に左ヒネリがかかっていると11番にはさらに強い「もらいヒネリ」がかかります。
これにより11番はコーナーポケットに向かいます。
この影響は案外大きく、今回の羅プロのトライでは6番がサイドポケットよりフット側の長クッションに入っています。手球のヒネリで反射角を調整することはある程度可能ですが、どれくらい調整すればよいかを事前に予測することはほとんど不可能です。
今回の動画の中で使用されているのは「ダイナスフィア」という最新技術で製造されたボールで、JAPA(アマ連盟)の公式ボールとなっています。