プレミアム・カスタムキューの代表格とも言える、ザンボッティです。
お客様から投稿されたキューで1999年の作品だそうです。
映画「ハスラー2」によるビリヤードブームのころ、無類の強さを誇った奥村プロ(現JPBFプロ)は8剣のガス・ザンボッティをプレーに使用しており、スタッフ野田を含む当時のファンには奥村プロも使われているザンボッティも憧れの的でした。投稿者の方も奥村プロのザンボッティにほれ込んで、このキューをオーダーされたそうです。
ザンボッティは故ガス・ザンボッティの作品と息子のバリー・ザンボッティの物の2種類があり、ガスは1988年に亡くなっているので、当然こちらはバリーの手によるキューです。
ガス・ザンボッティはキューメーカーとして活躍した20年くらいの間に1,200本ほどのキューを作ったとされていますが、バリーは1989年にザンボッティの製作を受け継いでから1997年までの間の製作本数がわずか300本程度で、その後に病気で長期の休業期間があり、注文されるキューの多くが複雑なデザインのものになっていることを考えると、生涯のうちにガスを上回る本数を製作することは難しいのではないかと思います。
フォアアームです。
ザンボッティ・キューの8本ハギデザインと言えばこれですね。
バーズアイメイプルに黒檀のハギが長短4本ずつ入り、長いハギにはピーコックと呼ばれるスクリムショウが入ったインレイ、短い方にはスピアヘッドのインレイ、そしてそれぞれのハギの先端にはダイヤインレイが施されています。
投稿者の方は長剣の先端はクローバーリーフのインレイを希望された(奥村プロの使用キューはそうなっていました)のですが、バリーに断られたそうです。理由は不明ですが、父親のデザインに敬意を表して、同じものを付けることを避けたのかもしれません。
ザンボッティ・キューの中でも8剣デザインは製作本数が圧倒的に少なく、手に入っただけでもラッキーと言えるでしょう。
このデザインのキューを要望する人が非常に多いので、いくつかのキューメーカーが同様のデザインのキューを製作しています。スタッフ野田が見たことのあるものだけでも、ポール・モッティ、ビル・マクダニエル、アーニー・マルチネス、そしてアダムジャパン(ムサシザンボなどと呼ばれて人気があります)などがあります。ポール・モッティはバリーと親交があって、このデザインを共用することについて両者の間で暗黙の了解があったようです。
これはスタッフ野田が1997年にバリーの工房を訪ねた際に完成間近だったキューです。左側の2本が8剣のデザインです。左から2本目はキュー尻にナインボールのラックがインレイで施されている珍しいデザインです。バリーはガスの時代にはなかった新しいデザインに挑戦したいと思っていたようです。
バットスリーブです。
ウインドウの中にプロペラ、そして4ピース・ダイヤと呼ばれるインレイが交互になった組み合わせです。
奥村プロの使用キューと同じデザインであると同時に、ザンボッティといえば8本ハギとこのインレイいうのが最も知られた、そして人気のあるものでしょう。
オーナーの方はこのキューをプレーに使用されているとのことで、グリップのリネン巻きが変色しているのが分かります。実はこのグリップ巻きにはコートランド社のNo.9という、かなり以前に絶版となった貴重なリネンが使用されています。マイフェイバリットキューの100本目でご紹介しているザンボッティにも同じものが使用されていますので、比べていただければオーナーの方がこのキューをかなり長く愛用されていることが分かります。貴重な糸ですので別の糸で巻きなおすことはせず、クリーニングして使われているそうです。
ジョイントです。
当然ながら、伝統的な15/16-14山のパイロテッドジョイントです。
メイプルと黒檀で作られたマッチングデザインのジョイントキャップもいいですね。
シャフトです。
キューをオーダーした際の3本と、その後バリーに追加で作ってもらった2本の合計5本が付いています。
シャフト側にもマッチングデザインのジョイントキャップが付いています。
実はザンボッティは伝統的にシャフト側のキャップを付けず、スタッフ野田がバリーにオーダーを入れた際にも結局シャフト側のキャップを作ってもらうことができず、ビル・マクダニエルに製作を依頼することになったのですが、このキューのキャップはバリーが製作したものだそうです。シャフト側のキャップを求める人が多いために作るようになったようですね。
キューショップジャパンに希少なHAKUキューの新作が入荷しました!
ザンボッティに優るとも劣らないクオリティを持つプレミアムカスタムキューです。