お客様から投稿いただいた、キューメーカーの重鎮、リチャード・ブラックのキューです。
ビリヤード歴の古い方ならその名を知っていることは勿論、現物を見たり所有されていたことがあるという方もいらっしゃるでしょう。
1990年代までは伝統的なデザインを基本とした12のモデルをベースとしてキューを作り、シンプルなエントリーモデルなども多く製作していました。その後、豪華絢爛なキューを製作するようになりましたが、高齢のために最近は製作本数が大変少なくなっているようです。
スタッフ野田が1997年にスーパービリヤードエキスポのリチャード・ブラックのブースで撮影した写真です。二人で持っているのは私がこの時に購入したキューです。
このころはまだ彼は元気で、私が好きな「ブラックバロン」と呼ばれるデザインの特注仕様キューの注文も快く受けてくれました。
フォアアームです。
メイプルのベースに黒檀の4剣ハギという伝統的デザインのお手本のようなキューです。
ハギには4枚のベニヤが付けられ、ハギの中にはスプリット・ダイヤもしくは3ピースダイヤと呼ばれるインレイが施されています。
バットスリーブです。
黒檀ベースにハギの中に入っているものと同じスプリットダイヤのインレイと、ステッチリングが入っています。
フォアアームがメイプルに黒檀ハギであれば、伝統的なデザインのキューではバットスリーブが黒檀というのはほとんどお決まりのようになっています。
ジョイントです。
ステンレスのジョイントカラーが付いた、5/16-14山のパイロテッドジョイントです。このデザインのキューにはこのジョイント以外は考えられないですね。
大変きれいな状態で保存されているキューですが、シャフト側の真鍮製メスネジに経年によるくすみがあり、製造時期が最近ではないことを物語っています。
フォアアームのクローズアップです。
4枚のベニヤの色使いがよく分かります。グリーンのベニヤを白を挟んで2枚使っており、落ち着いた感じのデザインに仕上がっています。
オーナーの方は、ギブソンやフェンダーといったギターの銘品に造詣が深いようで、その伝統的なデザインと同じものをこのキューに感じて手に入れられたそうです。
サインと製造年月が書き込まれており、2008年2月20日であることが分かります。
さて、マイフェイバリットキューをいつもご覧いただいている方の中には、このキューを見たことがあると思われる方がいらっしゃるかもしれません。
実は#032でご紹介しているキューと今回のキューはそっくりなのです。
ご覧いただくとお分かりになりますが、ハギに付いているベニヤの色とリングワーク以外はほとんど同じになっています。
しかし製作時期には10年もの違いがあり、同時期にまとめて作ったものではないことは明らかです。どのような経緯でこのキューが製作されたのかは不明ですが、このデザインが気に入ったという人がリチャードブラックに頼んで同じようなキューを作ってもらったという可能性は充分あります。前述のエキスポの時の写真説明で書いた通り、スタッフ野田もそのようなことをしており、特に珍しいことではないのです。
プレミアムカスタムキューには、1本1本に注文者と製作者の間、そして現在のオーナーの手に渡るまでの間に色々な物語があるものが多く、その背景や歴史に思いを馳せるというのもこういったキューの楽しみ方の1つかもしれません。
そんなプレミアムカスタムキューもぜひご検討ください。