こんにちは、スタッフ野田です。
早川工房のご紹介(その3)をお送りします。
早川キューといえば「ああ、あのボロンが入ってるキューね」という反応が返ってきそうなほどボロンは早川キューの特徴として知られています。
ボロン(BORON)とはホウ素という元素の一種で、タングステン繊維と組み合わせることで非常に軽量で高い強度・剛性を持つ素材を作り出すことが可能となるものです。
この素材はゴルフクラブや釣り竿、さらには戦車や航空機などの部品にも使用されています。
早川工房ではこの素材で作られたパイプをキューに組み込んでいます。
スタッフ野田の手元にそのパイプのサンプルが1本あります。
長さ43cm、直径19mm、厚さ1mm、重さ30gほどのこのパイプは非常に強靭で、試しに思い切り力を入れて曲げようとしてみましたが、ビクともしませんでした。
キューの曲がりはキューメーカーの大きな悩みの1つですが、早川氏はこのパイプを組み込んで曲がり防止に大きな効果を得ることに成功しました。
では、どのようにボロンが組み込まれているかをご覧いただきましょう。
これがボロンを芯材として通したグリップ材です。
この写真で分かる通り、ボロンのパイプの中に芯材を通し、それをグリップ材に埋め込んでいます。
こちらはグリップ材とフォアアーム材が混在していますが、黒いボロンが通してあるものがグリップ材で、そうでないものがフォアアーム材です。
これを見てお分かりのように、ボロンを芯材に入れるのはグリップ部分になり、現在の早川キューはすべてこれが入っています。
これにより曲がり防止と同時にバット自体のパワーと手球の直進性の向上を図っています。
なぜフォアアームには入れないのかと疑問に思う方もいらっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんが、フォアアームにまで入れるとバット全体が硬すぎてしならなくなってしまいます。
キューには適度なしなりも必要なので、グリップ部分のみにとどめているわけです。
こちらはシャフト用のボロン芯材です。
シャフトにはバット以上にしなりが必要なので全長に渡ってこれを入れることはできません。
根元(ジョイント側)部分にこれを入れればシャフトのしなりやバイブレーションが小刻みになります。
つまり撞いた瞬間に曲がったキュー先が真っ直ぐに戻るのが早くなるということです。
ゴルフのシャフトでも同じ考えに基づいた製品があり、アダムのACSSとACSS PROの違いもこれと同様の原理です。
これは使う人の好みの問題もあるので、シャフトにボロンを入れるかどうかは注文主の要望次第です。
では次にキューの各部に使用されている部品を見ていきましょう。
まずはリングワーク(飾りリング)です。
金属や樹脂で作られたリングです。
リングワークとしては最も単純なもので、シャフトのカラーやジョイント部分に単独で入れられたり、後述の手の込んだリングの上下をこれで挟んだりして使用されます。
装飾の入ったリング素材です。
銘木を使用したものが多いですが、樹脂や金属なども使用されます。
これを輪切りにして使用します。
こちらもリング用部材です。
同じデザインで色違いの物が何種類もあります。
キューのどこに使用するかによって直径が異なるので、同一デザインの物でも何種類かの大きさのものが作られています。
様々な色に染色されたベニア(種板)です。
ハギの縁取りやインレイ、リングの材料に使用されたりします。
次に、色々な樹脂の素材をご紹介しましょう。
これはイージス(aegis)です。
先角の素材として有名ですが、ジョイントやバットキャップなどにも使われます。
イージスとイージスⅡの2種類があります。
これはエルフォリンという樹脂です。
象牙に似た外見を持っているため人造象牙とも呼ばれています。
近年になって象牙の制限が厳しくなっているために、多くのカスタムキューメーカーがこれを代替品として使用するようになりました。
左端の白い2本はデルリンで、その右側はアイボリン3です。
デルリンは重くて丈夫で独特な色合いを持ち、伝統的なクラシックタイプのキューのバットキャップには欠かせない存在なのですが、接着剤も塗料も受け付けないというキューメーカー泣かせの一面を持つ素材です。
アイボリン3は少し黄色っぽい色をしており、先角の素材として使用されることが多いですね。
これはインレイ用のマザーオブパールやアバロニ(アワビ貝)の材料です。
CNCマシンで切り出して同じ大きさのくぼみをバット側に作ってはめ込み・接着します。
切り出された材料を見ると、ポピュラーなダイヤやオーバルなどの他にちょっと変わった手裏剣形などがあります。
キューの表面は結構きつい曲面なので、こういったインレイ材にはある程度の厚みが必要となり、また1個のパーツの大きさにも限界があります。
ジョイントピンです。
早川キューに使用されるのは主にラジアルピンと10山ですが、ユニロックなどの他の多くのジョイントも作ることができます。
ラジアルピンはアルミ製の物を使用していますが、何種類もの色があります。
今回はここまでです。
次回は早川工房紹介の最終回として、オプションの種類や完成品・完成間近のキュー、そして新製品のトリファイドシャフトなどをご紹介します。
キューショップジャパンでは早川工房のキューも随時仕入れております。
新製品トリファイドシャフト付きのキューもございますので、ぜひご覧ください。