三井川製作所取材レポート #2

スタッフ野田です。
三井川製作所の工房紹介レポートその2です。
今回はいろいろな工作機械を中心に紹介していきます。

これは、大きな板材から必要な部分を切り出す丸ノコギリです。
部材がたくさん置いてあるのでちょっとわかりにくいですが、写真中央あたりにノコギリの歯が見えます。この歯は使わないときは下部に格納されているのですが、写真撮影のために上に出していただきました。
切断する材料を置くテーブルは2つの部分に分かれており、これをスライドさせて大きな板材でも加工することができます。

これはバットを削る旋盤です。
この写真では仕上げ段階に入った状態のパープルハートをベースとしたバットがかけられています。
バットを回す旋盤なので、切削以外にもグリップ巻きなどの加工・調整も行ないます。
大量生産メーカーや広い工房を持つメーカーでは、バットを回す旋盤を何台も設置して、それぞれ固有の加工(糸巻だけなど)に特化させていることが多いですが、三井川製作所の工房はキューメーカーの工房としてはかなり狭いと言える(ジナキューやタッドの工房より狭いです)ので、そういうわけにはいかないのです。


この白くて丸い部品は、バットを旋盤にかける際に使用するカラーです。
旋盤にはチャックと呼ばれる材料を挟んで固定する部品があるのですが、バット材を直接このチャックで挟むと凹んだり傷ついたりするので、このような部品を間に挟みます。

こちらはシャフトを削り出す旋盤です。
企業秘密部分があるので、切削部分のアップしかご紹介できませんが、ご了承ください。
シャフト材をゆっくり回転させながら、側面から高速回転する刃をあらかじめ設定されたテーパーに沿ってシャフトを削りながらゆっくり動かしていくというものです。
通常、旋盤で材料を削る場合は、バイトと呼ばれる固定された刃を高速回転する材料に押し付けるのですが、シャフト材は細いため横方向から強い力を加えるとたわんでしまい、正確に削り出すことができません。
そのためこのような切削方法をとっているのですが、これを考案したのは、かのカーセンブロック
だと言われており、現在キューメーカーの多くがこれと同様の方法を採用しています。
そして一度で目的の太さに削り出すのではなく、少しずつ削り出すことを何度も繰り返して材料にストレスをかけないようにしています。
そして切削工程の間に不良部分が出たものは廃棄処分されるので、1本の完成品の陰には何本分もの材料が失われているということが珍しくないのです。

これはコンピューター制御のCNCマシンで、インレイなどの細工はデザインを数値データ化して
このマシンに入力して材料を加工しています。

これはインレイに使用する板材です。
インレイには銘木の他に、貝(マザーオブパール・アバロニなど)や石材(ターコイズ・マラカイトなど)そして金属(シルバー・銅など)も使用されます。

これは飾りリング(リングワーク)の材料です。
円筒形のベースに装飾用の部材をライン状に埋め込み、これを輪切りにすれば飾りリングが出来上がります。
この部材にはシルバーのラインが埋め込まれています。

出来上がった飾りリングのストックです。
自社製品なら同じデザインのものを何度も使用できますが、他社製キューの修理やシャフト作成をするためにリングが必要な場合は、それ1本のために専用のコピーリングを作らなければならないため、手間とコストがかかります。

ベニヤ(種板)のストックです。
ハギの縁取りやインレイに使用されたりする装飾用の着色された薄い板材です。
ベニヤは専門の業者から供給を受けているキューメーカーが多いのですが、三井川製作所では自社で製作をしています。ですので、多種多様な色のベニヤを作りだすことができます。
次回の記事で紹介しますが、三井川製作所の得意とするタケノコハギでは、剣ハギに比べてこのベニヤが表面に露出する面積が大きいので、色ムラがなく鮮やかな発色のベニヤが作れるかどうかは大変重要です。

これはスプレーブースの内部です。
表面の塗装を行なう場所ですが、揮発性の溶剤をまき散らすことになるので、工房内の一部をパーテーションで仕切って密閉し、ブース内には大型のファンとフィルターを使用した換気装置を備えています。
塗装作業中のキューが6本見えますが、これらはすべてタケノコハギで製作されたキャロム用キューです。

製作途中のバット・シャフト材です。
すでにご説明したように、バット・シャフトともに少しずつ何度も削って目的の太さに仕上げていくのですが、その段階別に保管されています。
状態によって削る回数は変動しますが、三井川製作所では10回くらい削っています。
ご覧のように製作途中の材料は吊り下げられて保管されており、ゴム製のキューハンガーも使用されていますね。
多くのキューメーカーがこのように吊り下げる方法を採用していますが、それはこの保管方法が簡単で常に自重で真下に力がかかるので曲がってしまうリスクが少なく、さらに床面積を取ることがないので、工房内のスペースを有効に利用できるというメリットがあるからです。

こちらも製作途中のシャフト・バット類です。
ファイバー製のドラム缶状のケースが使用されています。このようにシャフト・バットを垂直に立てて保管する方法もよく目にします。
保管している部材にはそれぞれに印がつけてあって、種類別・注文者別・行程段階別などに仕分けて保管されています。

これはジナキューの工房で保管されている製作途中シャフトです。
同じ重さのものを2本ずつペアにして、削る段階で不良が出たものは廃棄して残ったシャフトは別の同じ重さのシャフトと組み合わせるということをしていました。
これを参考にして、三井川製作所でも同じケースを購入・使用しているとのことです。

今回はここまで。
次回は三井川製作所が得意とするタケノコハギの種類と製作方法などをご紹介します。


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