スタッフ野田です。
三井川製作所の紹介 その4(最終回)です。
今回はタケノコハギの種類と独特の構造を持つ72-5シャフトを中心にご紹介します。

訪問時に工房にあった製作中のタケノコハギキューを並べてもらいました。
何本かハギの先端が切れてしまっているものがありますが、これは製作途上のためであり、削って細くしていくと次第にハギの長さが短くなっていくのです。
右側の2本と左から2本目はクロスタケノコと呼ばれています。その名の通り、縁取りベニヤが交差しています。
飾りリングをグリップ前に入れるためにハギがグリップの前で切断されてショートスプライス工法のフォアアームのような使われ方をしているものもあります。
デザイン優先のためにこうしているのですが、ちょっともったいない気もします。
左から4本目のキューは剣ハギとタケノコハギのコンビネーションになっていますが、タケノコハギの方には7枚ものベニヤが付いています。

左から4本目のキューのアップです。
ベニヤの数が増えるほど均等に各ベニヤを表面に出すことが難しくなり、またハギが長くなるほど
部材のテーパー調整に高い精度が求められます。

左から3本目のパープルハートのキューのアップです。
鮮やかな色の組み合わせが目の引きますね。
これは子持ちタケノコハギとでも言うべきもので、タケノコハギを入れた部材の上にさらにタケノコハギをかぶせて入れています。
左にあるのは「本タケ」と呼ばれているもので、タケノコハギの最も基本的な構造をしています。

パープルハートのキューにベニヤがどのように入っているかを、青いベニヤを張り付けた部材と比較して並べてみました。
この部材はこのキューに使用されたものではないのですが、青いベニヤの入り方をご覧ください。
この向きでバットに組み込んで丸く削ると、このようにタケノコハギとなるわけです。

これは上記の本タケキューの底部です。
ご覧の通り、ハギの部材がバット底部まで貫通していることが分かります。
これこそが「本タケ」の証です。

もう1本、完成間近のキューを持って来てもらいました。
交差したタケノコハギが上下に入った「ダブルクロスタケノコ」です。
ここまで読んできていただいた方には、このキューを作ることが相当に大変で手間のかかることがご理解いただけると思います。
また、ハギの長さが微妙に異なっていることに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。
これまでご紹介してきたように、三井川製作所では極限まで精度を求めた方法でタケノコハギを製作しているのですが、それでもタケノコハギの長さを正確に揃えることは難しいのです。
組みあがったバットのハギの長さが不揃いだった場合は、「剣出し」という作業である程度は調整できるのですが、それにも限界があります。
精密に組み立てておけばそのような作業は最低限で済むので、その意味でもハギを組む職人さんには大きなプレッシャーがかかります。

これは製作途中のJPBF小野寺健容プロのキューのブランクです。
当然ながらフルスプライス構造です。
完成したらどのようになるのか、想像してみてください。

こちらは製作途中の剣ハギのブランクです。
剣ハギでもほとんどがフルスプライス工法で作られていることがお分かりいただけると思います。

さて、三井川製作所といえば72-5(ななに-ご)シャフトを製作していることでも有名です。
これは5分割構造のシャフトで、360度÷5分割=72度というわけです。

これがシャフトを構成する断面が三角形で中心角が72度になっているメイプル材です。
これを5つ貼り合わせてシャフト材を作ります。

貼り合わせるとこのように断面が五角形の材料ができます。
これを旋盤で丸く削ってシャフトにするわけです。
断面を見ると各部材の5つの接合ラインが一直線に並ばないことが分かります。
4、6、8、10分割といった偶数での分割ではこれが一直線になってしまうのですが、これを避けることによりシャフトの剛性と品質の安定性、そして曲がりにくさを向上させています。
また、シャフト先端部分を中空加工することにより、トビを軽減したハイテクシャフトとなっています。

そしてこれをさらに進化させた72-5+5(プラスファイブ)シャフトも開発しています。
5分割の72-5シャフトの継ぎ目部分に銘木の板を挟み込んで接着し、強度のアップと視認性の向上を図ったものです。

725+5シャフトの断面です。接合部分に銘木が入っている様子がよくわかります。
このシャフトにはブビンガが使われていますが、他にもローズウッドやパープルハートなど5種類の銘木が選べます。

以上、三井川製作所についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
限られた資材・設備という環境の中で、3人の職人さんが持てる知識と技術のすべてを注ぎ込んでキューを作っています。
彼らを突き動かしているのは、「良いキューを作りたい」という情熱だと感じました。
三井川製作所のモットーは『プレイヤーのイメージを具現化するための一助になりたい』というもので、どのようなデザイン・構造のキューであろうと、丈夫でトラブルが無く、使用者が気持ち良く撞けるキューを製作していくことを目指しています。
これは「もう、これで十分」というゴールがない、果てしない挑戦と言えるでしょう。

キューショップジャパンでは、各種の72-5および72-5+5シャフトを販売しています。
ポケット用もキャロム用もございますので、ぜひ一度お試しください。

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