こんにちは、スタッフ野田です。
羅立文(ローリーウェン)プロによる14-1解説動画その6です。
例によって、1球ずつ次に何をしたいかを説明しながら撞いてもらっています。
それでは早速動画をご覧いただきましょう。
今回はちょっと変わったブレイクをしてもらいました。
ブレイクボールをラック内に残したという想定です。
この場合、手球は現状位置のままで、ブレイクボールをヘッドスポットに移動するルールとなっています。
ヘッドスポットのブレイクボールを使って効果的にブレイクする方法ですが、羅プロおすすめの配置がこれです。
手球をフットスポットの横1ポイントくらいのところに置いていますが、ここからヘッドスポットを結ぶライン上付近ならどこでもOKです。もっとヘッドスポットに近い方がブレイクボールを入れやすいでしょう。
これは右奥コーナーにブレイクボールを入れて手球を短長の2クッションさせてラックを割るというものです。
ラックの下の方(下から2列目)を狙っていますが、これには理由があります。
第1の理由はスクラッチの回避です。
ラックの上の方に手球が当たると手球がコーナーにスクラッチする可能性が高まります。
第2の理由はラックの真ん中に当てても大きくは崩れないことです。
手球が遠い距離を走ってくるのであまり強くラックに当てることができません。
そこで少ない力でも必ず数個は的球がラックから離れるように端を狙うのです。
勿論大きなクラスターが残ることは覚悟の上で、離れた数個の的球を使ってセカンダリー・ブレイクを計画します。
そして第3の理由は、もし長く外れた場合でもフット側の短クッションに3クッション目が入って下からラックに当たる可能性があることです。短く外れたらどうしようもなくなりますからね。
今回の場合、順ヒネリ(左ヒネリ)を入れたらまず短く外れてしまうので、ヒネリなしの押し球でショットしています。感覚的にはむしろ少し逆ヒネリを入れるくらいの感じかもしれません。的球から順ヒネリをもらうことになるからです。
羅プロは見事に宣言通りラックの下から2列目に手球を当てていますが、さすがに毎回こんなに上手くいくわけではないそうです。
さて、ブレイク後に狙える的球は1番しかなく、しかもその1番でラックを崩すのは至難の業です。
しかし幸運なことに15・6番のコンビがいけそうです。
それに気づいた羅プロは1番を入れて手球をテーブル中央にポジションし、このコンビでクラスターをブレイクしにいきます。
このように死に球を見つけることが大きな助けになることが良くあるので、特に大きな塊が残った時には慎重にチェックしてください。
ブレイクしましたが割れ方は今一つで、依然として大きなクラスターが残っています。
手球を左側にもってくれば2番でブレイクができそうです。
羅プロはここから9番を入れて15番に薄めに出して2番のブレイクポジションを取る予定だったのですが、撞く態勢が悪くしかも強く撞かなければならなかったために15番に厚くなってしまいました。
羅プロは方針を変更し、15番から真後ろにヘッドレール側まで引いてサイド前の12番でブレイクを試みます。
12番とラック間には距離があるので、正確なコントロールが要求されるショットです。
ブレイクは成功しましたが、あまり良い配置とは言えません。
遠い4番か、はたまた11・7コンビか? 2番の薄切りもあったかもしれません。
ここで羅プロは11・7コンビを選択したのですが、これが最善策かどうかは人によって違ってくると思います。このコンビは決して簡単ではないのですが、羅プロはコンビには自信があるそうで、またこの場合は手球が大きく動かないので、ある程度次の配置の予測ができるという点でこの方法を選んだそうです。
しかしコンビより遠い球の方がマシという人なら4番でも良いでしょう。次に間違いなく14番が狙えます。
羅プロは5番の厚みを見ています。
つまり14番を左上の遠いコーナーに入れて、次に5番を入れて8・3・5番のトラブルを解消しようとしているわけです。
ブレイクボールは10番に決まり、キーボールは15番か4番がよさそうです。
14番から引いて手球を10番に当てて止めました。
これはブレイクボール10番を動かしたかったわけではなく、何が何でも5番を左フリにして3・8番をブレイクするためにこうなったものです。
もし3・8番が動かないと、10番を動かさずに取り切ることが難しくなってしまいます。
そのため10番がちょっと動くかもしれないことを計算に入れて少し強めに引いたわけです。
5番を入れて残り6個の的球はバラバラになりました。どの順番で取り切るかのパズルの始まりです。
ブレイクボールの10番に対してキーボールは8番、これにポジションするキー・キーボール(Key Ball to Key Ball)は3番が理想的なのですが、そうなると今すぐに入れられる的球が2・4・15番のどれかとなり、難しいものばかりになってしまいます。
羅プロは悩んだ末に8・15番と取りにいきます。
理想を追い求めてもミスショットすればすべてが台無しです。成功率の高い現実的な妥協点を探すことも14-1の重要な戦術と言えます。
羅プロでさえ4番や15番は危険で取りにいけないのですが、これは一流プロだからこそと言えるかもしれません。14-1ではプロレベルの試合の場合、1ミスで勝敗が決まってしまう可能性があり、ナインボールなどに比べて1球の重要度が格段に高いのです。
15番のあと、この配置で2番から切り返して手球を長・短・長の3クッションさせるのですが、手球が3番に当たってしまいます。
3・4番どちらからでもいけるのですが、羅プロは薄い4番から3番に2クッションで出しに行きます。
3番に厚くなりすぎると厄介なので少し薄めにしています。
ここは3番から取りにいく人も多いと思います。
後述しますが、このシーンを見返した羅プロもこれは3番からの方が良かったかもしれないと言っています。でもこの時はなぜか4番の方が良いと感じたそうです。
フィーリング(経験と勘?)で取り方を決めるというのも上級者にはよくあることなのです。
3番はちょっと薄めなので、短クッション間のバタバタでポジションしています。
これは力加減・方向ともに簡単ではないショットですが、見事なコントロールでブレイクポジションに手球をもっていきました。
結果としてランアウト&ブレイクポジション取りに成功しましたが、羅プロ曰く「今回のは失敗で、良い取り方ではなかった」そうです。力加減に微妙なコントロールが必要なショットが多く、特に最後のブレイクボールへのポジションは適度なフリを確保することが難しかったとのことです。
また、3:54からの取り切りの順番は、まず3番を入れてて球を左の長クッションの方に持っていき、2番から3クッションで切り返して8番をサイドに取り、15番・4番と取る方が楽だっただろうとのことです。
一流のプロでもこうすればよかったと後から思うことが多い14-1というゲームは底知れぬ奥深さを持っています。