こんにちは、スタッフ野田です。
実際にプレーをしていると手球がクッションにくっついてしまうということがよくあると思います。
手球がクッションや他の的球と密着してしまった状態を「フローズン」と呼びますが、大抵の場合は撞きにくくなって困難な状況になることが多いです。

このようになると手球の上の方しか撞くことができないため、撞きにくいのはもちろん、次の的球へのポジション取りにも大きな制限がかかります。
しかし今回は、別の問題を取り上げようと思います。
次の配置をご覧ください。

ゲームはナインボールで、①から2へポジションしようとするところです。
①はクッションから球半分くらい浮いており、手球はクッションフローズンとなっています。
①の横に⑧があるので、②へのポジションは手球に強めの押しをかけて下図のようにポジションするのが最善でしょう。

手球はクッションフローズンですが、撞く方向はクッションとほぼ平行なためにそれほど撞きにくいというわけでもなく、撞点も自由に選べます。
問題はなさそうに見えますが、実はちょっとした危険がこのショットには潜んでおり、何も知らずにこのショットを行なうと、失敗してしまう可能性があります。
これを説明するためには、まず2つの事実を知っておく必要があります。
1つ目はクッションの高さについてです。下図を参照ください。

これはあるメーカーの直径2.25インチ(約57mm)の標準的なポケット用ボールを使用するビリヤードテーブルのクッションの仕様を示した図面です。
注目していただきたいのは、クッションの先端の高さがボールの直径の62%となっていることです。ボールの半径は約28mm、クッション先端の高さはボール直径の62%となる、1+13/32インチ(約35mm)となっています。この数字はメーカーによって若干の違いがありますが、いずれもクッション先端はボールの半径より高くなっているのです。実際の写真をご覧ください。

このテーブルはブランズウイックのゴールドクラウンⅢですが、手球がわずかにクッションの下に潜り込んでいることがお分かりいただけると思います。
こうなっている理由は、もしクッション先端がボールの半径より低かったらボールがテーブル外へ飛び出してしまう可能性が高まるためです。特に強い押しがかかった手球がクッションに直角に近い角度で入る場合、クッションが低いと容易にジャンプしてしまいます。たとえ手球がテーブル外に飛び出さなくても、クッションからジャンプして跳ね返ると反射角度が定まらず、手球のコントロールがしにくくなってしまいます。
それならクッション先端の高さをもっと高くした方がいいのではないかと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、そうすると別の弊害が発生するのです。それについては後述します。
2つ目は手球を撞いた瞬間のジャンプについてです。
キュー尻を上げて撞くと手球がジャンプすることは多くの方がご存じだと思いますが、水平に撞いても撞点を上げるとわずかにジャンプします。
ほとんど目視できないほどわずかなジャンプですが、下記のようなショットを試してみると確かにジャンプしていることが分かります。


このように手球の前にコインを置いて、撞点真上でキューは水平のまま強めに撞きます。
スローモーションもご覧ください。
キューは水平に近い角度で出ていますが、手球がコインに接触していない、つまり飛び越えているのがわかります。
これは撞点を上げると手球をテーブルベッドに叩きつける力が働くため、その反動でジャンプしてしまうのです。
手球と的球の距離がごく近くにある状態で強い押し球を撞くと手球が的球に当たった後に大きく跳ね上がるという経験をお持ちの方がいらっしゃると思いますが、その原因はこれです。
手球が大きくジャンプすると厚みが狂うのですが、これくらいのジャンプなら極薄の配置でない限り厚みに対する影響はほぼ無視できる程度です。
さて、以上の2点をふまえて今回のお題の配置に戻ります。
クッションフローズンしている手球をクッションと平行に近い方向に強めの押しをかけたショットをするという状況です。
ご覧いただいたように、撞いた瞬間に手球はジャンプするのですが、クッションがカブっているので、真上にジャンプすることはできません。

このように手球がクッションの先端にぶつかって、手球の進行方向がクッションと反対方向にズレてしまう可能性が出てくるのです。強く撞くほどその影響は大きくなります。
そしてクッション先端の高さをあまり高くできない理由は、この干渉度合いが大きくなってしまうからなのです。
ただ、そうはいっても強い押しが必要な場合もあります。

これは①から②へ出そうとしているのですが、ゆっくり撞くと手球は②に当たって手球と②の位置関係がどうなるか予測が難しいという配置です。そこでわずかにある左フリを利用して押しをかけた強めのショットで手球を弾いて、②の左側に手球をもっていきます。
こういった場合に闇雲に強く撞くのではなく、必要最低限の力加減で危険を最小限に抑えることを心がけるようにするべきです。
このような配置が手球フリーボールが回ってきた際、できるだけフリをつけたいという気持ちから手球をクッションにくっつけて置いてしまうことがあるかもしれません。しかしそれはできるだけ避け、わずかでも良い(1mmでOK)のでクッションから離して手球を置くようにしましょう。
この危険は手球を撞き出す方向がクッションと平行にごく近い場合に発生し、それ以外の方向に撞く場合はほとんど考慮する必要はありません。
なお、クッションには弾力があるので、手球に干渉してもコースのズレが致命的になるとは限りません。ですので、強い押し球をしても問題なく的球がポケット出来るということもあるのですが、いらぬ危険を犯す必要はありません。
手球がクッションに密着した場合のショットは、このような危険があることを認識しておきましょう。
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