タッドキューです。
古色蒼然といった言葉が似あう、CNCなどで精緻なインレイを駆使した現代的なキューとは程遠いデザインですが、それこそが多くのタッドキュー・ファンが求めるものでしょう。
サインもロゴマークも入っておらず、非常にシンプルなデザインのキューなのですが、分かる人には分かるタッドらしさを醸し出しています。
フォアアームです。
ハギもインレイもないストレートです。
ハギなしのキューは工作の手間は省けますが、杢目勝負となりますので使用する材料の選別には大変気を使わなければなりません。フォアアーム全体という広い範囲にわたって奇麗な杢目が出ている必要があり、わずかな不具合も許されない(ハギやインレイで隠すことができない)ので、通常のキュー以上に使用可能な材料が限られてしまうのです。
このキューはメイプルのフォアアームを黒く着色しており、俗に「黒焼きタッド」と呼ばれています。
着色することによりコントラストがより明確になり、杢目を引き立たせることができます。
ちなみに、「木目」と「杢目」はどちらも「もくめ」と読みますが、意味するものは異なります。
「木目」とは、簡単に言うと木材の表面に見える年輪の入り方のことで、原木からの切り出し方によって柾目と板目に分かれます。一方、「杢目」とはメイプルでいうとバーズアイ(鳥眼杢)やカーリー(虎斑模様)と呼ばれるような、木の種類により表面に現れる独特の模様の事です。
スネークウッド、チューリップウッド、レースウッドなど非常に独特で際立つ杢目を持つ銘木は高価ですが人気があり、キューによく使用されます。
バットスリーブです。
黒焼きメイプルに黒檀のウインドウで構成されたデザインです。
中心にマザーオブパールのノッチドダイヤのインレイを据えています。
独特の長いデルリン製のバットキャップが目を引きます。シリアルナンバーは確認していませんが、タッドのロゴマークがないので1970年代もしくはもっと古いものと思われます。
デルリンはそこそこの重さがありますので、バランスをとるためにはジョイント側も重くしなければならず、それゆえに古いタッドキューは全体が重くなっているものが多いのです。ただ、昔はナインボールなどよりストレートプールなどが主流で20オンス前後の重いキューがスタンダードだったために、意図的にこうしていたのかもしれません。
ジョイントです。
言わずと知れた、5/16-18山のパイロテッドジョイントです。
ステンレのジョイントカラーが付いています。
古いタッドキューはジョイントカラーの内径が現在の物より小さいものが多く、他のキューのシャフトを使おうとする場合には、シャフト側のダボが入らない可能性がありますので注意が必要です。
キューは杢目で勝負! というストレートキューは、お値段もお手頃なものが多いです。キューショップジャパンにもいろいろありますので、ぜひご覧ください。