マイク・ベンダーがアラスカの工房で製作しているベンダーキューです。
マイクは起業家のエド・ボアドに依頼され、カーセンブロックの指導を受けながらオメガ/DPKキューを作っていましたが、1992年に独立して自分のブランドを立ち上げました。
奥さんのトレーシーが優れたデザイナーだったこともあり、ルイ16世、キャビンフィーバー、オットーマンなどの名作を世に送り出しています。
今回ご紹介するキューは、「球バカ日誌」というブログを作られている「鮫さん」が所有されるものです。「球バカ日誌」は20年ほど前に掲載が開始されており、“Billiards Days”でも紹介されたことがあるので、ご存じの方もいらっしゃると思います。昔懐かしい内容の記事がたくさんありますので、ビリヤード歴の長い方には特にオススメです。
さて、このベンダーキューですが、「ダガー」と呼ばれるベンダーを代表するデザインの1つです。このデザインはオメガ/DPK時代に考案されたものですが、大変人気がありルイ16世もこのダガーデザインの一種です。
人気がある割にはあまりこのデザインのキューを見かけないのは、製作本数が少なく、ベンダーの中でも高価な部類に入る故なのでしょう。
鮫さんも2000年頃にこのデザインを広告で見かけて一目惚れしたのですが、販売されているダガーキューがなかなか見つからず、2011年にやっと国内業者から入手できたそうです。
入手元からは1992年製のベンダーキューと聞いているとのことですが、そうなるとこれは最も初期のベンダーキューの1本ということになります。
フォアアームです。
黒檀のベースに5本の浮きハギが入ったデザインです。
ハギ部分のアップです。
ハギはホーリーウッド(ヒイラギ)で、銘木で縁取られたマンモスアイボリー(化石象牙)のインレイが入っています。
ハギとハギの間には縁取りされた銘木のオーバルインレイが施されています。
バットスリーブです。
フォアアームと同じデザインを反対向きにしたものです。
この手のデザインではよく見られる手法ですが、精悍で一体感のある印象を与えてくれると思います。
ジョイントです。
3/8-14山のフラットフェイスジョイントです。
ジョイントカラーはフェノリック樹脂で、マッチングデザインのジョイントキャップが付いています。
ベンダーキュー特有のラダー(格子)デザインのリングワークがよくわかります。
ラダーリングは多くのキューメーカーが使っていますが、メーカーによって幅や格子間の間隔などが微妙に異なり、それによって特徴を出していることがよくあります。
ジョイントピンのアップです。
キューの外装部分にはサインもロゴマークもありませんが、ジョイントピン先端に「M.J.BENDER ALASKA」の文字が刻印されています。
このジョイントは緩みが発生しにくく強力な結合ができるのですが、それゆえにあまり強く締めるとジョイントピンが抜けてしまう可能性があります。また、シャフト側は木にメスねじが彫り込まれているので、シャフトを接続する際にはジョイントピンが斜めにならないように気を付ける必要があります。
30年以上前のキューですが、今見ても「美しい」「カッコいい」と多くの人が思うのではないでしょうか。このキューを参考にしたと思われる別メーカーのキューを見かけることもよくあり、それはこれが優れたデザインであることの証だと思います。
キューショプジャパンでは希少なカスタムキューも取り扱っています。
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