DAYTON CUSTOM CUES
フロリダのキューメーカー、ポール・デイトンのキューです。
ポール・デイトンは生化学者、疫学者といった経歴を持っているのですが、学生時代に学校にあった旋盤でキューに加工を施した経験を持っていました。
骨董品のレストアをしていた彼は、いつしか自分のブランドでキューを作りたいと思うようになり、1988年にキューメーカーとして名乗りを上げました。
初期のころはナイフ等を使って製作した文字通り手作りのキューでしたが、後にCNCマシンを導入しました。しかし彼はCNCでより複雑なデザインのキューを作ろうとしたのではなく、より高精度で高品質なキューを作ろうとしたのではないかと思います。デイトン・キューのデザインはシンプルなものが多く、確かな手ごたえを求めた「使うためのキュー」を目指したのだとスタッフ野田は思っています。しかし残念なことに彼はつい先日亡くなってしまい、もうそのことについて確かめるすべはなくなりました。
フォアアームです。
バーズアイメイプルにアンボイナバールの4剣デザインです。
間に紫色が入ったオシャレな4枚のベニヤがハギについています。
デイトンはこのベニヤも自分で作っており(多くのキューメーカーは着色済のベニヤを専門の業者から仕入れて使っています)、独自の色のベニヤが使用されています。
フォアアームはショートスプライスと呼ばれるブランクを使用する方法で作られていますが、ジョイント近くまで伸びた長いハギが目を引きます。
バットスリーブです。
アンボイナバールでバットキャップと一体になっています。
飾りリングが2箇所に入っていますが、リングの上下で杢目が切れていないですね。
つまりこれはリングワークではなく、インレイでリングを形作っているわけです。
杢目を大事にしたゆえなのか、それともリングワークによりキューの切断箇所が増えることを好ましくないと考えたゆえなのか、これももう伺い知ることはできませんが、プレイアビリティを第1に考えるデイトンらしい特徴です。
ジョイントです。
フラットフェイスのラジアルピンです。
ジョイントキャップもマッチングデザインのメイプルとアンボイナバールで作られています。
これだけでも相当な手間暇がかかっています。
デザインを決めて削り出して接合してジョイントネジを加工して塗装仕上げをする・・・ つまりキュー本体と同様の製作工程が必要となるのです。
小さいからと言って、ジョイントキャップもあなどれません。
ビリヤード用品にも小さいからと言ってあなどれないモノが色々あります。
キューの使いやすさやプレーのしやすさを大きく左右します。