GEORGE BALABUSHKA
オリジナルのバラブシュカ・キューです。
映画「ハスラー2」でその名が一躍有名になった、プレミアムカスタムキューの代表選手です。
半世紀以上前に作られたものなので工作精度や接着剤・塗料などのクオリティは現代の物とは比較になりませんが、それまでになかったキューを作り出したパイオニアとして、製作者ジョージ・バラブシュカの名はキューメーカーの歴史に燦然と輝き続けています。
フォアアームです。
メイプルに黒檀の4本ハギという王道デザインです。
クローズアップです。
ハギには縁取りベニヤが5枚入っています。
マザーオブパールのノッチドダイヤとドットのインレイがハギの中に入っています。
グリップの上に白リングをシルバーリングで挟んだリングワークが施されています。
つまりフォアアームとグリップ部分は分断されており、リングを挟んで繋がれているわけです。
ハギは本来バットの強度に寄与するための存在だったのですが、このように切断した時点でその目的はほとんど失われ、装飾目的としてのみ存在することになりました。
これを最初に行なったのがジョージ・バラブシュカだと言われています。
現在大多数のキューメーカーが採用しているショートスプライス工法はこれが始まりだったわけです。
バットスリーブです。
黒檀にハギの中と同様にマザーオブパールでノッチドダイヤとドットのインレイが配置されています。
少し後方からの写真で、尻ゴムの様子がお分かりいただけると思います。
この時代独特の濃い赤茶色をした尻ゴムがついています。
経年変化でボロボロになっていることも多いのですが、このキューの尻ゴムはまだしっかりしています。
ジョイントです。
もちろん14山のパイロテッドジョイントです。
シンプルなシルバーリングがジョイントとシャフトのカラーに付けられています。
このキューに付けられていた、リチャード・ブラックが書いた鑑定書です。
おそらくリチャード・ブラックによってリフィニッシュがされた際に書かれたものだと思われます。
バラブシュカやザンボッティなどのプレミアムキューは偽物も出回っており、しっかりした鑑定眼を持つ人物が作成したこのような書類は大変価値のあるものです。
特にすでに故人となっているキューメーカーの作品の真贋を見極めたりメンテナンスを行なうことは、その内部構造に精通したベテランキューメーカーの仕事の1つとなっていることも多いのです。
スタッフ野田もかつて所有していたバラブシュカの鑑定とリフィニッシュをジナキューのアーニー・ギュテレスに依頼したことがあります。
1本1本手作りされたカスタムキューには、性能云々とは別の魅力があります。