皆さんご存じ、ザンボッティです。
お客様からご紹介いただいたキューです。
1988年に亡くなったガス・ザンボッティの作品で、何人かの手を経て現オーナーの方に渡ったキューなので製作年度ははっきりしませんが、入手した後にオーナーの方が5~6年使い込んだところ、塗装の剥離が進みインレイの脱落が危惧されそうな状態になったそうです。
半世紀近く前に製作されたキューであり、当時の塗料や接着剤の性能と経年変化を考えればそのような状態になってしまうことは、どんなに腕の立つキューメーカーの作品であっても致し方ないと言えます。
オーナーの方はガスの息子バリーが2001年に来日した際に会うことができ、このキューの鑑定をしてもらうと同時にリフィニッシュとシャフトおよびジョイントキャップの作製をお願いしたところ、バリーはこれを快く受けてくれたとのことです。
リフィニッシュされたキューが送り返されてきたのは2003年で、それからはほとんど使うことなく保管されていました。
キューが送られてきた際の送り状です。
バリーから直接発送されており、直筆のサインがあります。
こういった書類も貴重なものであり、スタッフ野田もできるだけ保管するようにしています。
フォアアームです。
メイプルに黒檀のハギが4本入った非常にベーシックなデザインです。
ハギのアップです。
4枚のベニヤが付いていることがわかります。
外側の2枚のベニヤを暗い色にして、内側の2枚は明るい色にしています。
遠目に見ると幅広で濃淡2色の縁取りに見える配色です。
同じ4枚ベニヤでも濃淡を交互にしたり、外側の3枚を全部暗い色にしたものなどもありますが、これは好みの問題ですね。
バットスリーブです。
黒檀のベースにダイヤとドットのインレイが交互に4つずつ入っています。
シンプルながらザンボッティらしい洗練されたデザインだと思います。
スリーブの上下にはステッチリングが入っており、ジョイントおよびシャフト側のリングとマッチングしています。
ジョイントです。
ステンレスのジョイントカラーが付いた、5/16-14山のパイロテッドジョイントです。
現オーナーさんがこのキューを入手した時には、同じ14山のジョイントを持つショーンのジョイントキャップが付いていたそうです。
現在はバリーに製作してもらったジョイントキャップが付属しており、バット側にはマッチングデザインのステッチリングが施され、上面にはザンボッティを示す「S」の文字が入っています。
ちなみにこういったジョイントキャップだけの製作依頼というのは実はキューメーカーにとっては
あまりありがたくないものなのです。
ジョイントキャップ作成は、本体の切削加工、リング加工、オス・メスそれぞれのジョイント加工そして塗装と、小さいながらもキュー本体の製作過程と同じような手間がかかるのですが、小さいゆえにあまり高額な費用を請求できないのです。
したがってキューと一緒の注文とか、懇意のお客さんからの依頼などといった場合でなければ断ることもあるのです。
快くジョイントキャップの製作を受けてくれたバリーからは、製品に対するこだわりとお客様に対する心遣いが感じ取れます。さすがは一流メーカーといったところでしょうか。
こういったカスタムジョイントキャップがあるだけでキューの魅力が大きくアップすると思うのはスタッフ野田だけではないでしょう。
キューショップジャパンでは、ジョイントキャップだけでなく、キューの魅力を引き立てたりビリヤードをより楽しくプレーするためのアクセサリーやメンテナンス用品を数多く取り揃えております。ぜひご覧ください。
アクセサリーの一例です。