今回はちょっと変わったキューをご紹介します。
その名も「POWER CUE(パワー・キュー)」というものです。
世の中には色々なキューがありますが、一般に向けて市販されたキューでこれほど奇妙・奇天烈な見た目をしたものはなかなかないでしょう。説明されなければ、とてもキューとは思えない代物であり、警棒かバーベキューの道具ではないかと思われるような外観をしています。

「POWER CUE」とうのはこのキューのブランド名で、メーカー名ではありません。
残念ながらメーカー名は不詳で、おそらくジャンプキューがもてはやされた1980年代後半から1990年代初期に名もないメーカーもしくは個人業者がノリで製作したものではないかと思われます。
その頃はジャンプキューの黎明期で色々なジャンプキューが販売されていました。
その多くは、とにかく短くて軽いキューならジャンプショットができるとばかりに、通常のキューの2/3から1/2ほどの長さの細いキューを製作・販売するメーカーが雨後の筍のように乱立していました。
しかしこのキューは鉄で出来ており、大変重い(400gほどあります)のです。材料に木材は一切使用されておらず、鉄パイプに樹脂のタップとウレタンフォームのグリップを付けた構造になっています。
アメリカではTSA(アメリカ運輸保安局 Transportation Security Administration)により飛行機の客室内に持ち込めない危険物品の1つとしてビリヤードのキューが定められており、なんでそんなものがと思う人も多いのですが、このキューについては納得せざるを得ないでしょう。

シャフト(?)部分です。
前述の通り鉄で作られており、テーパーもかかっていないただのストレートの鉄パイプです。
凶器として使ったら木製の警棒よりも危ないかもしれません。

ロゴ部分のアップです。
塗装で描かれたロゴなので、使用により大半が消えてしまっていますが、末尾が「CUE」となっていることが分かります。もともとは「POWER CUE」と描かれていました。「Made in USA」の文字も見えます。

グリップ部分です。
柔らかいスポンジのような、ウレタンフォームで作られています。
尻ゴム(?)はオレンジ色の樹脂で、このグリップは何か別の用途に使用する部品を流用したものと思われます。

キュー先です。
先角はなく、樹脂製の非常に硬いタップがシャフトに直接付けられています。
鉄パイプのシャフトにどうやってこのタップを取り付けているかは不明で、タップ交換はおそらく不可能でしょう。もしできるとしても、直径が大きすぎて適合する市販のタップはありませんので、何か樹脂の丸棒を削り出すなどして自作する必要があります。

このキューは30年ほど前にスタッフ野田が購入したものなのですが、購入した動機はこんなキューでまともなジャンプショットができるのかという興味があったためでした。
はたして本当にジャンプショットができるかどうか?
その結果は以下の動画をご覧ください。

近距離にある妨害ボールを見事に飛び越えています。
全長が短いので通常のストロークではちょっと窮屈なフォームになりますが、ダーツストロークで飛ばすこともできます。
なぜ、こんな重いキューでジャンプショットができるのでしょう?
秘密はおそらく鉄パイプの剛性の高さによるものだとスタッフ野田は思っています。
最近はカーボンシャフトのジャンプキューが人気ですが、カーボンは木よりも剛性を高くすることができるので、よく飛ぶのではないかと思います。こんなに太い鉄パイプならその剛性は木やカーボンのシャフトの比ではないでしょう。
剛性がジャンプショットのカギである証拠として、こんな実験動画があります。

なんと金槌で手球を叩いてジャンプさせる「トンカチジャンプショット」です。
見ている人をびっくり仰天させること間違いなしの面白いショットですが、絶対にマネしないでください。手球やテーブルの石板が破損しても当方は責任を負いかねます。

さて、このキューはルール違反ではないかと思った方がいらっしゃると思います。キューは長さや重さなどの制限がルールにより定められており、それに違反しているのではないかということです。
全長とタップの直径を測ってみましょう。

ご覧の通り、全長は約58cm、タップ直径は18mmほどとなっています。
そしてWPAルールで定められているキューの規定は、長さは40インチ(101.6cm)以上、タップ直径は14mm以下でなければならないとされています。
このキューはこのどちらの条件も満たしておらず、したがって現行のルールでは使えないので、古き良き時代(?)を懐かしむアイテムとして楽しむだけのものですね。
先端直径だけ14mmに絞った鉄製のシャフトを軽いバットに付けて(25オンス以上の重さのキューはルールで禁止されています)全長を40インチ以上にしたものを作れば、カーボンを凌ぐ無敵のジャンプキューが出来上がるかもしれません。どなたか作ってみませんか?

キューショップジャパンでは、色々なジャンプキューをご用意しています。
使い勝手の良いものを探してみてはいかがでしょうか。

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