お客様から投稿いただいた、ガス・ザンボッティです。
言わずと知れたカスタムキューの雄ですね。
ピーコック、プロペラ、スピアヘッド、スリーピーススター、フォーピースダイヤ、バーベルなど、数々の新しいデザインを発表し、他の多くのキューメーカーに多大な影響を与えました。
惜しくも1988年に急逝してしまいましたが、息子のバリーが引き継いでザンボッティ・キューを作り続けていることは多くの方がご存知だと思います。
オーナーの方によると、このキューは1980年頃に作られたようで、オリジナル・コンディションのままだそうです。ガスの絶頂期に作られた1本ですね。
40年も前の接着剤・塗料などの性能は現在の物に及ぶべくもなく、いかに名職人の手により製作されたものとはいえ経年変化に耐えられずに消えていったものも少なからずあるため、その意味でもこのようなオリジナルのままで良い状態を保っているキューは貴重だと言えるでしょう。
フォアアームです。
非常にオーソドックスな、メイプルに黒檀の4剣デザインで、ハギには4枚のベニヤが付いています。茶色のベニヤが目立ちますね。
ショートスプライスと呼ばれる方法で作られているのですが、これもガスの考案したものと言われています。それまではフルスプライスでハギを作ることが一般的で、これには大きな材料を接合する機材と技術が必要で、材料の無駄が多いという欠点があり、当時の多くのキューメーカーたちは、ブランズウイック社がフルスプライスで大量に生産していたタイトリストというキューを切断して、ハギの部分を利用していました。
現代ではショートスプライスのキューがフルスプライスよりはるかに多いことからも、ガスの影響の大きさが分かります。かのジョージ・バラブシュカもガスのハギの高品質さを認め、ガスのブランク(ハギの入った半完成フォアアーム部分。バラブシュカは自分でハギを作ることはしませんでした。)をバラブシュカキューに使い続けたという逸話が残っています。
また、その人気が災いして、ガスのブランクを利用してザンボッティの偽物を作るという不届者もいたようです。
バットスリーブです。
スタンダードな黒檀のバットスリーブとデルリンのバットキャップですが、スリーブ下部にリングワークが入っているのが珍しいです。
ジョイント下部と同じようなステッチ・リングを入れることは敢えてせず、もっと幅広のリングになっています。これはスタッフ野田の想像ですが、ハギに付けられた茶色のベニヤに合わせてこのようなリングワークを入れたのではないでしょうか。実際、このキューで一番目立つチャームポイントは茶色のベニヤではないかと思います。
ジョイントです。
お馴染み5/16-14山のパイロテッド・ジョイントです。
ジョイントカラーが白素材ですが、ガスのキューはステンレスが使われることが多く、このようなキューは珍しいです。ジョイントカラーの下に入れられたメイプルのステッチ・リングの様子が良く分かります。
重さは19.2オンスほどと、この時代のキューにしては軽い(当時は20オンスを超えるようなキューが多かった)のですが、おそらくこのキューの製作をオーダーした人の要望でこうしたのでしょう。
キューショップジャパンにはキューの重さやバランスを変えるためのアクセサリーも揃っています。どうもキューがしっくりこないと感じたら、試してみてはいかがでしょう。